幸運と謝辞

ドミノの上を歩く人

未破裂脳動脈瘤があることがわかって以降、「こんなものそれほどたいしたことではない」と思っていたけど、実際、手術が終わってみると「それ以上にたいしたことなかった」と感じている。

ただしそれは多くの「幸運」によるものだとも考えている。
いやむしろ今こうしていられること、このようにふざけたブログを書けてきたことはただ単に幸運であったからに過ぎないと言っても過言ではない。

不運にも破裂してしまった方もたくさんいらっしゃるのでことさら幸運自慢はしたくないが、まずはそれを素直に喜びたい。

そしてひとつのケースとしてこういうこともあった、と。
さらに、未破裂脳動脈瘤持ちの方には今後のため

この、ぼくの場合に幸運だったことを、運ではなくあなたの意図的な行為の結果できる部分があればぜひそうしていただきたい

という思いも込めつつ、何がどう幸運であったかを順不同で書いてみる。

妻がいること

これを幸「運」と言ってしまうのはどうかと思うしいきなり臆面もなくこれというのもテテヘと照れるけれども、「よかった」と思ったことなので書く。
これにはふたつの意味がある。

結婚していること

まず「近親者がそばにいる」という、なんと言うか「都合」的なこと。

手術をする場合、インフォームドコンセントなどの際に近親者の同席が求められる。手術のときも居ろと言われる。場合によっては同意書に署名もしなければならない。
それだけでなく入院や術後のリハビリ的な部分でも、そばに近しい人がいてくれるとそうでないとでは心理的にも物理的にも大きな違いがある。
例えばこれが東京ひとり暮らしで親類が遠方だというような場合、移動なども含め双方に結構な負担が生じる。

この妻であること

受診のきっかけは妻の体調不良という決して好ましいものではなかったけれど、これがなければ脳ドックを受診しなかったし、未破裂脳動脈瘤が発覚することもなかった。
また、血圧や血液の改善にも大きな関係のある睡眠時無呼吸症候群を疑うこともなかった。「息が止まってるよ、睡眠時無呼吸症候群かもよ」と言ってくれたのは妻。
さらにこれまた血圧血液改善のための食生活の見直し(血液浄化計画および130以下計画)に大きな尽力をしてくれたのも妻。
2年に及ぶ経過観察を大過なく過ごすことができたのも、手術入院そして社会復帰が無事できたのも、妻が終始そばで支えてくれたからだ。

ありがとうよ、妻。

脳ドックを受けたことと未破裂脳動脈瘤が発覚したこと

繰り返しになるけれども、普通はよほどのことがないと脳ドックなんて受けようとは考えない。まずそういう機会があったことを幸運と言わずして何と言うべきか。
妻が「受けようかな」と言ったとき、35,000円も出して自分も一緒に受ける必要はぶっちゃけどこにも無かったのよ。

この「受けようかな」と「ほんのきまぐれ」がなかったら脳動脈瘤を一生知らないままだった(まあ知らないままそして破裂しないまま天寿を全うしたかもしれないんだが)。

もしかしたら未破裂脳動脈瘤が見つかるかもしれない脳ドック。これを受けた方がいいのか、はたまた受けない方がいいのか。それは個々人の考え次第だが、見つかれば対応のしようがある。
前年の12月28日に受診した脳ドックで、2016年1月26日に「右中大脳動脈分岐部に脳動脈瘤が見つかったから精密検査を勧めるよ」という結果が出た。できちゃったものはしょうがないがしかし。

未破裂脳動脈瘤が見つかって何が幸運なのかと不審に思う方もいらっしゃるかもしれないけれど、これがあるということに気づかずある日突然破裂してクモ膜下出血を発症してしまうのと、あるということに気づいて気をつけていくなり最終的に手術で破裂を予防するなりでは天と地ほどの違いがある。

未破裂脳動脈瘤はよほどのことがないと自覚症状のない、それゆえに結構怖い病気であることは間違いないと思う(だから早期に見つけて経過観察も含め然るべき対処が必要と思う)。

血管も広義に臓器とするならばぼくは血管も立派な沈黙の臓器だと思う。そして未破裂脳動脈瘤は、よほどのことでない限り何の自覚症状もない。その存在に気づかない。まさに沈黙の病だ。

動脈瘤が解離性でも多発性でもなかったこと

ぼくのは7mmくらいでネックも太いという嚢状のものだったが、そこにいっこしかなかった。
嚢状なら部位や大きさや形状にもよるがコイルを詰めるなりクリップで留めるなりで破裂を予防することができる。
でも解離性の場合は非常に面倒だ(調べてください)。
また多発性ならそれだけ心配のタネが多いということになる。すべてを破裂予防手術するとしたらその分負担が増す。

動脈瘤の位置がよかったこと

動脈瘤があること自体「ちっともよくねえ」ことなので「よかった」というのもおかしな話ではあるけれど、ぼくの動脈瘤は右中大脳動脈分岐部にできた。
側頭部からの深さおよそ4~5cm、顔面からの深さおよそ8~9cm。
これでも脳動脈瘤好発部位の中でも比較的浅い方だ。

手術が近づいてきて、ふと自分の未破裂脳動脈瘤のより正確な位置を知りたくなった。右中大脳動脈分岐部とは頭蓋骨のどこあたりなのか?まあ今さらそれを知ってもあまり意味はないんだけど。
手術まであと3週間に迫ったこのタイミングで何故か自分の脳動脈瘤を改めてよく見てみたくなり、2016年5月の血管造影検査(アンギオ)の際の撮影画像を入手。頭の中を晒してみる。
退院前日に撮った造影CTの画像をもらった(ていうか買った)のでその一部を晒す。ビフォーアフターのアフターだ。主治医はこれも見ながら手術やその後の経過について詳しい説明をしてくれた。

またこの中大脳動脈の破裂率はほかの部位に比べて低いという話もある。

クモ膜下出血の既往のない7mm以下の未破裂脳動脈瘤のうち、内頸動脈-後交通動脈瘤を除くウイリス (Willis) 輪前方の動脈瘤はほとんど破裂しないことが示された。

ー国際未破裂脳動脈瘤研究(ISUIA, 2003)

前交通動脈、内頸動脈-後交通動脈分岐部の動脈瘤は中大脳動脈の動脈瘤より破裂率が約2倍高かった。またこれらの部位の動脈瘤は比較的小さなものでも破裂率は年0.5%以上であった。

ー日本破裂脳動脈瘤悉皆調査(Unruptured Cerebral Aneurysm Study; UCAS)

上記いずれもWikipedia「脳動脈瘤」の項より

なんだよじゃあそんなに慌てて手術しなくてもよかったんじゃね?と思わなくもないが、早めに始末しておいた方が好ましいと考えた。

重要なポイントで常に選択肢はひとつであったこと

  1. 手術をした病院は脳ドックを受けたところでかつ信頼できる病院であり、脳動脈瘤の状態から最早セカンドオピニオンも不要。病院選びをする必要がなかった。
  2. 7mmという脳動脈瘤の大きさや形状と年齢から、いずれ手術しなければならないと決まったようなものだった。つまり手術をするべきか否かに悩む余地はなかった。
  3. しかし手術をするタイミングをどこでどう確保するかが問題だったことから、早期手術か経過観察かで悩む余地はなかった。
  4. 脳動脈瘤の大きさと形状から開頭クリッピング術しかないという主治医の所見であり、ふたつの術式についていろいろ調べたり悩んだりする必要がなかった。
  5. 2018年前半に手術すると決めたら、諸般の事情により手術日は2月上旬しか選びようがなかった。
開頭クリッピング手術を勧められても流石にその場で答えは出せない。手術そのものはいずれ受けるつもりだが、その時期を決められない。せいぜい気をつけることしかできないが、どうにかなる。
2017年11月8日、手術日決定。ぼくの場合どうやら1年半ほどが経過観察期間の限界だったようだ。こうなりゃやるしかない。早速予約をしたが諸般の事情により選択肢はひとつだけ。

選択肢がひとつしかないというのはとても楽だった。
あれこれ悩んだりする必要がなかったから。

信頼できる病院が自宅近くにあったこと

これは地味に大きい。

あんまり詳しく書くと身元がバレそうなのであれだが、ぼくがお世話になった病院は脳神経外科において一定の評価と実績を有していて、理事長も院長も脳神経外科専門医であり、脳神経外科専門医だけで9名体制云々と、しっかりしたところだ。

主治医となったF先生もご経験と適度なフランクさで十分信頼できた。

そういう病院が自宅や妻の実家からクルマで多く見積もって15分。
定期検査を受ける場合でも午前中に済ませて午後から出勤できる。何かあれば妻にも義父母にもすぐ来てもらえる。

これがもし電車やクルマで何十分かかけて行かなければならないところだったら移動負荷もバカにはできない。

脳ドックを受ける時点から、自宅にできるだけ近い、未破裂脳動脈瘤などの対応実績や体制のある、つまり脳神経外科のある総合病院を選ぶ方が、その後何かあったときのことを考えると楽ちんだ。

アンギオで問題が起きなかったこと

手術だけでなく、アンギオ(=アンギオグラフィー:血管造影検査)にもリスクがある。

ぼくの場合は造影剤アレルギーも合併症も出ることがなかった。
術後も造影CTがあるから、術前のもので問題が起きていれば術後のそれも慎重にならざるを得ない。だけどぼくの場合はその心配はなかった。

ゴールデンウイーク中の2016年の5月1日に入院して、血管造影検査(ANGIO:アンギオグラフィー)を受けた。撮影された画像を見て自分の未破裂脳動脈瘤をはっきり確認。そのリアルさに興奮。

手術で問題が起きなかったこと

手術については処置そのものを幸運と言ってしまっては主治医やスタッフの方に大変失礼なんだけど(ごめんね)、今のところ合併症(後遺症)も出ていないことは幸運と言ってもある程度は差支えないと思う。

みなさん、ありがとう。

それと、全身麻酔でも何の問題も起きなかった。

2018年2月5日午後から14日午前までの正味9日の入院期間中、可能な限りリアルタイムに近いかたちでその模様を投稿にしてきたが、投稿の数もそこそこあるので一旦ざっくりとまとめてみる。

格安の個室があったこと

手術・入院した病院には血管造影検査のときに一度入院した。そのときは4人部屋だったが、今回はわけあり格安個室があった。
間取設備は一泊20,000円の部屋と同じだが、

  1. 救急患者が来た場合は移動を相談させていただく
  2. ナースステーションが近いため少々うるさい
  3. 部屋備え付けのシャワーが使えない

ということで格安になっていた。
1は覚悟の上(脳神経外科の救急なら明け渡しも喜んで応ずる)、2はまあそれなりに、3は別に問題ない、いずれにせよ一泊5,000円じゃなかったらとてもじゃないけど個室なんか考えられない。
他の人に迷惑をかけたくない気を遣いたくないし他の人に迷惑をかけられたくない気を遣わせたくないし、なにより個室なら電話もできるほかさまざまな自由度が高くとても快適で、入院時のストレスが非常に低いものになった。

入院日も退院日もいい天気だったこと

これも地味に幸運だった。
だって考えてもごらんなさい、これから頭の中をかっぽじられに行く日が酷い曇天だったり大雪だったり大雨だったりしたらもうただそれだけで絶望してしまいそうになる。
退院だって、突然の破裂リスクという呪縛を断ち切ってこれから社会に戻ろうという日が酷い曇天だったり大雪だったり大雨だったりしたらもうただそれだけで水を差されまくりだ。
気分が全然違うもの。

周囲の理解があったこと

まあ、未破裂脳動脈瘤の手術に対して理解が得られないというケースがあるとは思えないし、未破裂脳動脈瘤の開頭クリッピング手術をするということはごく一部の人にしか伝えていないのであれなんだけど、それでも仕事関係の方々に「2月の前半ちょっとフル稼働できません」という勝手な都合を快く理解していただいたのはありがたいことだった。

みなさん、ありがとう。

未破裂脳動脈瘤発覚後に医療保険に入れたこと

ふつうはぼくくらいの年齢(今満51歳)にもなれば医療保険というか生命保険のひとつやふたつ入っているのが普通だと思うから、大抵の方にとってはこれは幸運でも何でもないと思う。

未破裂脳動脈瘤の発覚直後に、そこから入れる医療保険を探したが流石になかった。でも初回の検査から1年を過ぎたころダメ元で当たってみたら、その時点で入れるものがひとつだけあった!

手術入院の費用は普通に無事に終われば医療保険がなくても払えない金額ではない。

退院したので、とりあえず今回の開頭クリッピング手術入院の「病院清算時の費用」を書いてみる。事前に仕入れていた情報と同じくらいの金額。これで破裂リスクとさよならなら、安い。

でも、医療保険があれば自己負担額はさらに少なくなるから、後付けで契約できたのは幸いだった(請求手続きはこれからだけど)。


頭の中にあったことを改めてこうして書きだしてみると、さらに改めて「幸運だったな」と思わずにはいられない。

各方面に、幸運に、感謝。