賑やか頭

手術後、頭の中で音がするようになった。音と言っても他の人に聞こえるような音ではない。
自分で「音として」感じるだけで、おそらく実際には振動だと思うけど便宜上「音」と言う。実はこうした音は、その発生場所や音の質が変化しつつ、術後10日を過ぎた現在も発生している。

手術直後から発生

ICUにいたときからときどき頭の中で「ぽこ」とか「こと」とか「ぷく」とか「ぷつ」とかいう音がしていた。小さい泡が弾けるような音だ。
最初は頭を低くする(身体を横にする)と発生した。
主な発生場所は前頭葉の周囲。
このときはまだ発生頻度が低く、気持ち悪いには悪いがこれが気になって寝つけないということはなかった。

入院5日目術後3日目に、主治医のひとりであるI先生が回診にきたのでそのことを報告すると、

ときどきそういう人がいます。
空気が抜ける音でそのうち収まります。

ということだった。
そのときは「ああそうですか」と流してしまったのだが、後日詳しい話を聞いた。

頭蓋骨を開けると外気が入る。
頭蓋骨を閉じるとその空気は頭蓋内に残る。
脳みそは頭蓋内で液体に満たされ半ば浮いている状態にある。
頭蓋内に入った空気は行き場がないのでしばらく頭蓋内を気泡的に移動する。
そのときの振動を音として感じる、と。
そしてその空気は時間の経過とともに体液に吸収される、と。

入院7日目術後5日目ごろから、次第にこの音が気持ち悪く気になってきた。
痛みは全くないのだが、身体を横たえると(頭の位置が低くなると)気になってしまい寝つけないのだ。
そこで主治医に再度そのことを報告した。

開頭時に頭蓋内に入った空気云々の例の音だが、発生頻度が増している。
一定のリズムを伴うことがあり、心拍に連動しているように思えるときもある。
また音のバリエーションが増えてしまった。
最初は「ポコ」「プク」「コト」みたいなものだけだったのが、昨日あたりから「ブジュル」とか「ギュル」とか、何か液体が分泌されるような音まで出てきて賑やかなことこの上ない。
上体を完全に起こしているときには発生せず、横になると発生する。
痛みなどは伴わないがとにかく気持ちが悪いしうるさい。
そのうち収まるのかもしれないがこれが気になって寝付けないのでしんどい。

このときの主治医の回答も

まあ、そのうち収まりますよ。
合併症(後遺症)とかじゃないんで全然心配いりません。

というものだった。
そう言われても寝つけなくて困ってるんだよ。医者もそう言うほかないんだろうけど、辛抱するしかないのか。

入院7日目術後5日目の投稿で、ぼくはこの現象をなんとか前向きに捉えようと涙ぐましいwことを書いている。

未破裂脳動脈瘤の開頭クリッピング手術のため2018年2月5日から入院。入院7日目術後5日目の模様。頭の中の異音についていろいろ考えるに、これは再生の息吹なのだ!と思うことにしたが。

ベロリと剥かれた部分の頭皮(この場合は真皮とかそういう深い層を含むよ)を手のひらや指先で軽く押してみると、微妙に浮いた感触があり、押した瞬間に微かに「ムギュ」という音がすることに気づいていたんですよ。

ここから推測できることは、そもそも頭蓋骨と頭皮は接着的に固定されているわけではないけど、切開したことによって頭皮のテンションがそれまでとは変わってしまっており、剥いたものを元にもどした部分はまだ再定着していないような感じなわけだ。

とすると、「ポコ」「プク」「コト」とか「ブジュル」とか「ギュル」とかは、頭蓋内に入った空気が移動したり吸収されたりする音であったり、頭蓋骨の外で表層が再生しようと頑張っている音なのだ、きっと。

翌日も、翌々日も先生たちが回診に来るたびに一応状況報告をしたが、毎回答えは同じだった。そして結局退院するまでこの異音のせいで(とばかりも言い切れないが)寝つけない状態が続いた。

退院前日に撮ったCTの画像を見ながら主治医と話しているとき、頭蓋内に謎の黒い部分があるのに気づいた。

ちょちょちょちょちょ!ここここれは何ですかこの黒いのは!?

主治医曰く、

これが「空気」です。
手術直後に撮ったCTのと比べると小さくなっています。

なるほど右側にある。それにしても何も説明がなければこんなの見たらドキッとするよね。

手術後に発生した頭の中の異音がなかなか収まらず気色悪いので、お医者さんの話をもとにちょっと調べてみたら「気脳症」というものが見つかった。これなのか?今度確認してみよう。

退院後

退院して自分のベッド、自分の枕で寝た日も、寝ようとすると異音が発生した。
ただ、ベッドや枕が慣れたものになったせいか、音は気になったが寝つけないということはなかった。実際、退院した夜、その次の夜は普通に寝入っている。
寝入りやすいか寝つけにくいかというのは、生活リズムや寝具などの影響もあり、この異音だけのせいとも言い切れないと今は思う。
寝つけなくて困ったというのが問題だったから、寝つけさえすればこの異音は以前ほど気になることはなくなった。

ただ退院してから、音の発生場所や音質にまた変化が起きてきた。

  • 入院中は、基本的に頭が低い位置にあるときに
  • 最初は主に前頭葉付近で「ポコ」「プク」「コト」といった感じの音
  • 次いで後頭部付近で「ブジュル」「ギュル」といった感じの音

だったが、退院翌日の夕方(ちょうど会社からの帰り道)くらいから

  • 普通の姿勢(立ったり座ったり上体を起こしている姿勢で
  • 右側頭部で「ブジュル」「ギュル」といった感じの音
  • 後頭部から延髄にかけての範囲くらいで「ギシ」「ミシッ」「ギュリ」とか、軋むような感じの音

に変わった(範囲広がっとるやん!)。

そのうち消えはするんだろうけど、

いつ消えるんだか。