全身麻酔明けの記憶

手術から時間が経って忘れてしまう記憶や曖昧になってしまう記憶がある一方で、ふと思い出すこともある。それもかなり具体的に。不思議だな。

手術が終わり全身麻酔から覚醒してICUに移るまでのことを少し思い出した。

手術が終わって、主治医の「終わったよ」の声で意識が戻った。
既に抜管されていて拘束も解かれていた。
「はい」と返事した。
拘束については全身麻酔に入る前にそうされたような気がするだけで、実際に拘束されたのか、されたのならいつ解かれたのか、全くわからない。

目を開けるとうすぼんやりと主治医の顔があり、「目、とりあえず見えてる」と思った。

続いて女性の声がして名前と生年月日を言えというので言った。
「あ、喋れてるし耳も聞こえてる」と思った。
今度は「右手動かして」「左手動かして」「足動かして」と言われるままに順番に動かしていった。
「うん、少なくとも末端は動く」と思った。

主治医が「じゃレントゲンとCT撮ります」と言ったかと思うとストレッチャーだかベッドだかが動き出した。

手術室エリアとICUは地下1階で、CTやMRIは1Fにある。
ストレッチャーだかベッドだかごとエレベーターで移動し撮影室へ。
その間ずっと目はつぶったままだった。
意識してそうしたわけではなくて、自然にそうなっていた。

撮影機器の寝台に移されるとき「いち、に、さん!」があるわけだけど、「マット入れさせてくださいねー、身体ちょっとひねってください」と言われた。
厚さ10cm近いおそらく硬質ウレタンっぽい素材の、長さ1m弱くらいのマットを背中の下に入れられた。
マットについては背中の触感にもとづく想像。
たぶんそのマットの両側には取っ手のようなものがいくつかあって、それで患者を持ちあげて移動させるんだろう。
「身体ひねれって、いきなり結構しんどいことやらせんだなあ」と思った。
実際はそう大変なことではなかったけれどなにしろ全身が「おっくう」な状態だった。
身体をひねっているとき「もうちょっと」と言われたし、マットが入ると軽くのけぞるような体勢になったから、そのマットの厚さはそこそこありそうだと思った。

撮影が終わるとまた「身体ひねって」があってストレッチャーだかベッドだかに戻り、エレベーターで地下1階のICUに移動した。
ICUでは「いち、に、さん!」がなかったような気がするから、移動はストレッチャーじゃなくてベッドのままだったのかもしれない。

そこでしばらく記憶が途切れている。
意識が遠のいたのかもしれない。

次に目を覚ましたのは、妻と義父母がやってきたときだった。
妻がぼくの名前を呼んだ。
気づいたときまず何か言ったと思うし、もう一言二言言葉を交わしたと思うけどそれは憶えていない。
「田舎に電話して」とは頼んだ。 

妻の手を握って「今何時?」と訊いたら「2時半」と妻が答えた。
地下1階と1階の往復の間、全くの感覚値だけど30分くらいだったんじゃないかと思う。
9時に手術開始で当初予告どおり所要時間4時間だとすると13時に終わるはずだ。
でもこれまでの(親類の外科手術の)経験から1時間程度の遅れ誤差は普通にあることだから(前にも書いたけど)「あ、大きな問題はなかったんだな」と思った。

開頭手術をすると頭の中に余計な血液や髄液が溜まらないよう、排出用のドレーンをしばらく付けたままのこともあるようだ。
でも後日妻に「おれ、頭から管出てた?」と訊いたら「たぶんなかったよ、もう帽子被ってたから見えなかっただけかもしれないけど」とのことだった。

「管抜きますね」とか「ホッチキスしますね」と言われた記憶はない。
それに比較的早くから姿勢を変えようと試みたけど看護師さんも何も言わなかったから(ドレーンがある場合あまり頭を動かしてはいけない)、おそらくは最初から無かったんだろう。

手術前、「おれが自撮りできないときは写真撮ってね」と妻に頼んでいたんだけど、ICUでの写真は無い。
後日そのことを尋ねたら「(ICU自体が)そういう雰囲気でもなかったし、ピースサイン出さなかったから」とのことだった。
そのときはぼくにも「撮って撮って」と頼む余裕はなかった。

ICUでは、身体は動かしにくくはあったけど、どこかが動かないということはなかった。
何時ごろなのか全くわからないけれど、看護師さんが少し水を飲ませてくれたとき、「あ、嚥下できる」と思った。

「お名前と生年月日と今いる場所を言ってください」と何度か言われた。
たぶん3回くらい。
どういうタイミングで言われたかはさっぱりわからない。時間わからないし(掛け時計はあったけど見えない)。

「今いる場所」について「病院名」を言えばいいのか「ICU」と言った方がいいのか、どちらがより正確な解答なのかを考えて最初戸惑った。
どっちも正解なんだろうけど、そういう細かいがどうでもいい思考ができる状態にあるんだなと思った。

「全身麻酔明けの記憶」への2件のコメント

  1. 1
    SHU says:

    術後のことは断片的にしか覚えていません。
    主治医(だと思います)の「終わったよ」というセリフのとき肩を叩かれ、起こされたという感じで「もう少し眠っていたい」と思ったのが最初でした。
    その後記憶途切れて多分CTに行ったんだと思いますが、「1,2,3」が、CT室でのことなのか、ICUのことなのか朧気でした。ただ移るとき自分で移動しようとしたのを覚えています(できませんでしたけどww)
    その後主治医が手足のチェックの際「ぎゅっと握って」と言われたとき、力を思いっきり入れてもいいんだろうか、先生が痛い!って言わないかしらと変な心配をして、加減してしまいました。まさに、

    >そういう細かいがどうでもいい思考 

    ができる状態なんですね。

    麻酔の後(特に全身麻酔)のあとって水は一晩飲ませてもらえないと思っていましたけど普通にくれるんですね(私は吐いてしまいましたけど、確かに呑み込むのに苦労はありませんでした)

    • 1.1
      筆者 says:

      ほんと不思議ですよね、頭はぼーっとしているのに、そういうことには頭が回るっていう。

      状況によってはICUでは何も飲めないことがあるようですね。ぼくは退院するまでそういうことがあるってことを知りませんでした。