CAUTION AFTER

Twitter経由でちょっと気になるトピックスを見つけました。

この記事には抄録が引用されていますが、そこにはなにやらちょっと気になることが書いてあります。

この調査では、クリッピング手術を受けた人の長期的予後を見ていくと脳梗塞発症率がおよそ1%で、これは日本人全体の脳卒中発症率(年間の脳卒中発症人数は29万人で、全人口1.27億人で割ると発症率はおよそ0.2%)よりも高いぞ、と。

さらに、論文の筆者の方がコメントを寄せてらっしゃいますが、そこでは

論文にはnが少ないので部位別には書きませんでしたが、中大脳動脈瘤に特に脳卒中発症が多かったです。

などとこれまた気になりそうなことをおっしゃっています。

おやおやこれは。

不安神経症的な人であればここでどうしようもなく不安になって夜も眠れないメシも喉を通らないとなってしまうかもしれませんね。

ここだけを捉えて非常にネガティブな捉え方をするならば、「年間破裂率1%を抑えるためにクリッピング手術をするとその代わりに発症率1%の脳卒中リスクを負う」ということになるということですかね。
それじゃあわざわざ頭を開けたのに割に合わないような気もしますがw

しかしぼくはまず1%も0.2%もたいした差はないな、と思います。
どっちも「ほとんどない」にほぼ等しいから。

ぼくはどんな調査結果でも結論として書いてあること(それが抜粋であれば特に)はとりあえず疑ってかかるので、この件についてもじゃあその脳卒中を発症した人の背景(年齢、性別、親族を含む脳(血管)疾患の既往、手術前の生活習慣、手術後の生活習慣、未破裂脳動脈瘤のタイプ、発症部位、大きさ、形状など)はどうだったの?クリッピング手術あるいはクリッピング処置された未破裂脳動脈瘤と脳卒中との因果関係はどうなの?と考えます。

とにかく抜粋や引用だけでなく全部読んでみようと思いまして、幸い全文訳も用意されているのでダウンロードさせていただいて、読んでみました。
論文って慣れないから読みにくいですね。理解するのが難しいです。機械翻訳のようで誤字が多いせいかもしれませんが。

サンプルの属性などについては特にバイアスはかかっていなさそうですが、母数(n数)は多いとは言えない(164例)のでこの結果を一般化できるかどうかは少し微妙かもと思います。
「この調査では」「クリッピング手術をした人の脳卒中発症率が国内一般のそれより高かった」という事実を述べているに過ぎませんが、そうした事実はある、ということは間違いありません。

またこの論文には、クリッピング手術と脳卒中の因果関係、つまりクリッピング手術そのものが脳梗塞の発症要因であるかどうかについての言及はありません。
この調査結果をもってクリッピング手術後の脳卒中発症リスクに関し明確に断言できるものはないようです。
ないようですがしかし、何らかの因果関係があるのかもしれません。あるいはないのかもしれません。そこはわかりません。

それらはそれらとして、ひとつの事実として「クリッピング手術をした人の脳卒中発症率が国内一般のそれより高かった」ということはありつつも、ここで大事なのは「1%>0.2%」という数値ではなく、「クリッピング手術後も脳卒中を起こす可能性はある」ということであり、また論文筆者の方が述べられているように

長期フォローの重要性、およびリスクファクター管理の重要性

というところでしょう。

そもそも「クリッピング手術で未破裂脳動脈瘤の破裂予防治療した」ということはあくまで「その動脈瘤はもう破裂しない」というだけのことに過ぎませんし、それは当然のことながら「今後未破裂脳動脈瘤が生じない、他の脳(血管)疾患が生じない」ということを意味するわけでは全くないわけです。

だからクリッピング手術を受けた後も引き続き血圧血管血液などに気を配ることが大切であることは間違いないですね。

またこういう話もあります。

どうやらクリッピングよりコイリングの方がよい、という流れのようですね。

まあ何にしても、クリッピング手術しか選択肢がなく、クリッピング手術をしてしまったぼくには今さら術式のことはどうでもいい話ではありますが、もはや習慣化している(タバコは除く)血圧血管血液の健康維持には努めたいと思います。

というより、日本人の死因ナンバー1であるガンで死ぬかもしれないわけですがw

「CAUTION AFTER」への3件のコメント

  1. 1
    SHU says:

    「もしもえらべといわれたら」記事のコメント欄で筆者さまが貼り付けてくださったリンクをそれはもう穴が開くほど読み、実はメールにてもっとこの記事について掘り下げてほしいと、出すところでした。その翌日にこの記事・・私の執念が通じたようでちょっとしたホラー気分を味わいましたw

    まず、脳動脈瘤治療の話5 に関しては、破裂した脳動脈瘤のことであって、未破裂ではありませんよね。なので私はやはりクリッピングに分があると思います。実際この脳外科医の先生も未破裂の場合は2:8でクリッピングを選ばれています。

    あと・・もう一つの論文・・・私の中では突っ込みどころ満載だな、というのが正直なところでした。素人のくせに、生意気いいます!
    ぶっちゃけますよ?
    10年以上もの間にたった166人しか手術症例しかなく、(名医だと年間軽く超える数です)
    しかもそのうち術中死2人(未破裂で?今どの病院でも未破裂で術中死を出してるところ
    ないと思います)、合併症に至っては14人・・8%ですよ!それが少ないってどういうことなんですか????普通に合併症8%です。合併症からイベントやらが生じたかもしれない、とはならないんでしょうか?現在合併症が起こる率ってそんなにないですよね。
    この論文1991年からのデータですよね。
    古いと思います。CTやらMRIが出始めて数年くらいの頃です。
    その時代の技術ですと、そりゃ術後に梗塞だの、脳出血だの、といったいわゆる「イベント」が増大するようなレベルであっただろうなと想像に難くないです。
    特にこの論文筆者の方がおっしゃっている、一番多かったとおっしゃる中大脳動脈瘤なんぞ、クリッピングの王道ともいうべき場所で分母も大きいと思いますからパーセンテージではわかりかねますが、絶対数では「イベント」患者(って適切なのかな?)も必然的に増えると思います。(ほかの部位なんぞ怖くて当時はくも膜下出血でも起こしてないかぎり脳外科医もできなかったんじゃないですかね)

    >長期フォローの重要性、およびリスクファクター管理の重要性

    クリッピングだからといって安心しちゃだめだよ、というなら納得はできます。

    >血圧すら気にしていない患者とそのまま患者の血圧すらきかずにDo処方診療しているレベルの脳外科医もたまにいますので、彼らへの警鐘のつもりです。

    ここは真摯に受け止めたいと思います。現在もおそらくそのような印象をお持ちなんだろうな、というのが伝わります。きっと事実として、中大脳動脈瘤のクリッピング後のイベントは多いのかもしれません。でもこの論文はちょっと素人を説得するにも無理がある気がします (^_^;) ←何度も生意気言いますw

    幸い私の主治医は血圧にはうるさく内科医の処方する降圧剤に不満らしく自分で処方したがりますので、私は両方の先生に血圧管理をしていただけるという恵まれた環境におります。(考え方に違いありますよ、内科医と脳外科医でw)

    あ~だめだ。もっと賢い文章で、言いたいことが言いたかったのに結局感情論になっちゃった。
    まぁいいか。筆者さまが理路整然と並べてくださっているし・・
    勘弁してください><おさまりがつかなかったんです。

    • 1.1
      筆者 says:

      こんにちは。
      詳細にお読みになりましたね、流石です。
      SHUさんのようにきっちり読み込む人ばかりだといいのですが。
      別に試したわけじゃないんですが、そうなんです、前提を把握すると実はいずれもクリッピング手術について何の心配も要らない内容なんですよね。

      長期的予後についての話なので、症例の時期は古くならざるを得ないですよね。
      現在クリッピング手術をした後の長期的予後のデータが出るのはもっと先になりますし、SHUさんのおっしゃるとおりその頃は結果も変わっていることでしょう。

      ただまあ、この場合、調査などの前提はさておき、そこで訴えんとするメッセージだけ受け止めればいいんじゃないかと思います。

      • 1.1.1
        SHU says:

        なるほど。筆者さまが「とある記事」を削除された理由がよくわかりました。
        こっそり購買読者になっておりまして、削除されても新着記事は連絡がきており
        その一部が残っているのですw

        >この場合、調査などの前提はさておき、そこで訴えんとするメッセージだけ受け止めればいい

        逆に、かなり大切なメッセージだと思うのにあんな調査前提を出すと、かえって
        不信感を抱かれると思いますけどね。実際血圧管理にぞんざいな脳外科医も内科医も
        存在しますから。血圧計すらもってない患者もいると思いますよ。
        そういう方たちへの警鐘であるならば、もっと効果的な方法があるだろうに、と
        思った次第です。

        >>血圧すら気にしていない患者とそのまま患者の血圧すらきかずにDo処方診療しているレベルの脳外科医もたまにいますので、彼らへの警鐘のつもりです。

        もう一度貼り付けておきますwこれ重要ですよねwこれさえ伝わればいいのです^^